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差なので、発電機による燃焼エネルギーの変換時に制約となる、熱力学的限界(効率=(T1-T2)/T1、T1は高熱源の温度、T2は低熱源の温度)が存在しない。
次に、生体中で水素イオン濃度差が生み出されるメカニズムについて見てみよう。このメカニズムの理解は、植物の光合成研究の進歩によってもたらされた。植物の光合成に関する研究は、過去度々ノーベル化学賞の受賞対象になってきた(表5−1)。これらの研究によって、クロロフィルによる太陽エネルギーの利用は次のように理解されている。クロロフィルは、一様に光合成を行うのではなく、アンテナ部分と中心に位置する反応中心とがあり、これによってエネルギー密度の低い太陽光を集光し、効率を高める工夫が凝らされている(Michel&Huber)。光合成の重要なステップは、炭酸固定による有機物生産(Calvin)に加えて、図5−3に示すように、この反応中心において生体中の水素供与物質から電子を抜き出し、結果として水素イオンを生産し細胞膜の内と外に水素イオン濃度勾配を得ること(Mitchell)にある。水素イオン濃度差は、そのままATPの合成など化学反応を引き起こす生体のエネルギー源となる。太陽光と水と炭酸ガスによって必要なエネルギーを基本的にまかなう、植物の合理的なエネルギー戦略が理解できる。

 

表5−1光合成に関連したノーベル化学賞

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